日常生活の必需品、水。その水に発がん物質が含まれている場合があること、そして、その濃度が夏場になると上昇することをご存知ですか?
問題の物質は、「トリハロメタン」。有機ハロゲン化合物の一種で、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルムの4種類の総称です。
最初にトリハロメタンの存在が指摘されたのは1972年、オランダでのことです。ライン川から引き入れ、塩素処理した水からクロロホルムが検出されたのです。続いて1974年、アメリカのミシシッピ州・ルイジアナでの調査から、トリハロメタンと住民の発がん率の関係を「否定できない」とする結果が出、世界的に注目されました。
ちなみに現在のところ、動物実験で2種類以上の動物に発がん性が認められているのは、トリハロメタンの中でもクロロホルムのみですが、他の化合物についても研究が進められています。
トリハロメタンは、わき水など、人工的な処理をされていない自然の状態の水からは検出されず、浄水処理された水から検出される物質です。なぜでしょうか? それは私たちが安全に水を飲むために施されている「塩素処理」が、トリハロメタン生成の原因になっているためです。
さて、では何故トリハロメタンができるのでしょうか?
原水(水道水にするための処理を施す前の状態の水)には、赤痢やコレラなどを起こす病原菌が含まれている可能性があります。そのため、こうした病原菌を殺すための塩素処理が不可欠となります。この「塩素」が、トリハロメタン生成の一方の原因です。
他方の原因は、原水そのものの水質です。東京のような大都市では、戦後、河川の水質汚濁が急速に進みました。人口が増え、河川の下流部では上流の下水処理場で処理した水を取水して浄水し、水道水として利用するようになりました。
もちろん、生活排水や工業廃水はある程度、処理されてから河川に流されていますが、それでも有機物やアンモニアなどが多く含まれています。こうした物質(「トリハロメタン前駆物質」と呼ばれます)の多くは、水中や土中で生物によって分解されますが、難分解性の物質は処理場まで残ってしまうのです。
難分解性物質の代表は、「フミン質」と呼ばれるもの。この物質は大便など、生物が分解しきれず最後まで残った物の中に含まれており、下水や下水処理場の排水、屎(し)尿処理場の排水には処理後も多く残っています。
また、富栄養化(※1)が進む上流の湖などでは、藻類が異常に増殖している場所も多く、これらの藻類がやはりフミン質の原因となります。藻類の中には、カビ臭のもとになる物質を作るものもあり、下流での水道水の異味・異臭の原因ともなっています。
このように決して体にとって良いものではトリハロメタンを除去することが健康を維持できるもっとも近道となることでしょう。 |